腸内細菌叢(腸内フローラ)の乱れは肥満のもと?
菌と健康
肥満を解消し、健康的にダイエットするには、太りにくい体質へと改善することが第一。
その体質改善にも、腸内細菌が関係していることを知っていましたか?
近年の腸内細菌研究によって、「肥満の人の腸内細菌はファーミキューテス(Firmicutes)門に属する菌が多い」とされていましたが、別の研究によれば「日本人では、ファーミキューテス門に属するブラウティア(Blautia)属の菌が多いほど内臓脂肪面積が少ない」という報告もあり、肥満と腸内細菌の関係は一筋縄ではいかないことがわかってきていると、前回のコラムで取り上げました。
→(コラム「肥満と腸内細菌の関係は、海外と日本では違う?!」参照)
では、そもそも肥満はどのようにして引き起こされるのでしょうか。
腸内細菌叢(腸内フローラ)が乱れると腸管バリアが低下!
脂肪分の多い、高カロリーな食事を摂ると、体内では脂肪分解のための胆汁酸の分泌量が増え、胆汁酸に耐性をもつ腸内細菌が増加し、腸内細菌叢は乱れてしまいます。
こうした腸内細菌叢の乱れが、腸管のバリア機能を低下させてしまうのです。
腸管のバリア機能が低下すると、グラム陰性の菌に由来する「内毒素」とも呼ばれるリポポリサッカライド(LPS、糖脂質[リポ多糖])が腸管から血中に侵入し、全身の慢性炎症を誘発することによって、肥満が引き起こされるのではないかと考えられています。
腸内細菌のバランスを整えて肥満を抑制!
このように、腸内細菌叢の乱れが肥満を引き起こすことが明らかにされつつあるなか、2021年9月に日本の研究チームから、「海藻に含まれる食物繊維のアルギン酸ナトリウム(SA)が、腸内細菌を介してメタボリックシンドロームを抑制する」ことが、国際的な学術雑誌『Nutrients』で発表されました。
この発表では、SAの摂取により特定の腸内細菌(Bacteroides属)が増加し、高脂肪食による腸管内の炎症の誘発が抑えられ、メタボリックシンドロームが抑制されることが示唆されています。
腸内細菌叢の乱れによって炎症が誘発され、肥満を引き起こすというメカニズムが存在する一方で、特定の腸内細菌が増加することによって炎症が抑えられ、肥満を抑制するというメカニズムも存在することが指摘されたのです。
このことは、太りにくさ(太りやすさ)の度合いを決定する大きな要因となっているのが、腸内細菌叢を構成する腸内細菌のバランスであることを示しています。
また、腸内細菌叢の構成は食習慣によって左右されるため、たとえば太りやすい人が特定の食品(成分)を摂取することで、特定の腸内細菌を増やしてバランスを整え、肥満を抑制できる可能性を示しているのです。
日本人は肥満の抑制に関与する“痩せ菌”を持っていない?
その他に、海外の研究結果から、“肥満の抑制に関係している腸内細菌”としてアッカーマンシア(Akkermansia)属ムシニフィラ(muciniphila)種やクリステンセネラ(Christensenellaceae)科が知られるようになり、“痩せ菌”が見つかったとメディアで取り上げられたりもしています。
しかしながら、日本人でこれらの菌を保有している人は少なく、保有していても腸内細菌叢全体に占める割合は非常に少ないため、これらの菌をターゲットとするプレバイオティクス(特定の腸内細菌を増やすための機能性食品など)は日本人には有効に機能しない可能性があります。
日本人の腸内細菌叢は、ほかの国の人々とは異なる特徴的なものなのです。
だからこそ、どのような腸内細菌叢の乱れが、どのように全身の慢性炎症を誘発し、肥満を引き起こしているかを、より詳細に研究することが求められています。
このような研究を進展させてゆくことで、近い将来には、個人の腸内細菌叢の特徴に応じて、肥満を抑制するための適切なプレバイオティクスを選択することができるようになるでしょう。
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