腸が元気なら心も元気!?「うつ病」と腸内細菌の関連性
菌と健康
何をしても気分がふさぐ。体がだるくて動けない。
DNA解析技術が急速に進歩していくなかで、これまで原因がはっきりしなかった病気に、腸内細菌が関わっていることが明らかになりつつあります。
大腸がんや炎症性腸疾患、過敏性腸症候群などの消化器系の病気をはじめ、肥満や糖尿病などの生活習慣病、アトピー性皮膚炎や関節リウマチなどの自己免疫疾患……、そういったさまざまな病気が腸内細菌叢(腸内フローラ)の乱れによって引き起こされていると、世界中の研究機関から報告されているのです。
また、およそ腸とは関係がなさそうな、うつ病や自閉症スペクトラムなどの精神・神経系疾患と腸内細菌との関連についても研究が進んでいて、ストレスに対する体の反応や精神・神経系疾患の発症に、腸内細菌が関わっていることを示す研究結果もあります。
近年、このような脳と腸の密接な関連は「脳腸相関」や「腸内細菌叢−腸−脳 軸」と呼ばれ、腸内細菌は精神・神経系疾患の病理研究において、いまや最も重要なテーマとなっています。
例えば、うつ病は慢性的なストレスが原因で発症することが多いと知られていますが、腸内細菌がいない“無菌マウス”を用いた実験などによって、健全なストレス応答には腸内細菌が不可欠であることや、慢性ストレスによって腸内細菌叢が変化することなどが報告されています。
また、無菌マウスは神経細胞の維持・成長に不可欠な脳由来神経栄養因子(BDNF)の発現が低下していることからも、腸内細菌が脳機能の維持にも関わっているとの報告もあります。
さらに、うつ病には神経炎症が関与しているとの報告があり、神経を含む全身性の慢性的な軽度炎症に腸内細菌が関わっていることからも、腸内細菌叢とうつ病の関連性が示唆されています。
では、うつ病と関連のある腸内細菌は、どれなのか。
当社が構築した約1万8000人の日本人の腸内細菌叢解析データベースを用いて、被験者のうつ病の自己評価尺度(CES-D※)と腸内細菌叢の関連を解析した結果、うつ病と関わっている可能性のある多くの腸内細菌が特定されています。
そしていま、この腸内細菌をコントロールする(原因・悪化につながる細菌を減らし、改善・緩和につながる細菌を増やす)ための食品成分を研究し、その食品成分の摂取によって実際に腸内細菌がどのように変化し、うつ病の病状がどのように変化するかについて、さらなる研究を行っています。
※ うつ病の発見を目的として米国国立精神保健研究所(NIMH)により開発されたうつ病の自己評価尺度
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