健腸ナビ

新型コロナウイルス感染予防のヒントは腸にあり!?

菌と健康

2022.04.26

2022年4月に累計感染者数が世界全体で5億人を超え、いまなお多くの人の日常生活に大きな影響を及ぼし続けている感染症のひとつ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。

治療法や感染のメカニズム、重症度に影響を及ぼす要因の研究が進められているなかで、その要因のひとつとして挙げられているのが、実は、腸内細菌叢なのです。

というわけで今回は、COVID-19と腸内細菌叢の関連性について報告されていることを、いくつかご紹介しましょう!

腸内細菌叢がCOVID-19重症化に関係?

まずは2021年4月に発表された、香港中文大学の研究グループによるCOVID-19患者と健常者との腸内細菌叢の比較や重症化との関係についての発表から。

COVID-19患者の腸内細菌叢は、健常者に比べて増加している菌と減少している菌があり、特に減少している菌には、免疫調節作用があると報告されている酪酸産生菌が含まれていることが判明しました。

そして、このように特定の菌が増減した腸内細菌の構成は、治療が終了して30日が経った後も変動がなかったとのことです。

また、腸内細菌の構成は患者の重症度や炎症性サイトカインの増加とも関連していたことから、腸内細菌叢のバランス不全(ディスバイオシス)が免疫反応に影響し、重症度を左右している可能性があると考察されています。


さらに、2021年10月のブラジルの研究グループの発表においても、COVID-19患者の腸内細菌叢には、健常者に比べて多い菌と少ない菌があり、特にバクテロイデス(Bacteroides)属に属する複数の菌種が多いことが報告されています。

このバクテロイデス属に属する複数の菌種が、ACE2受容体の発現を抑制することは、先行研究で報告されていました。

ACE2受容体はコロナウイルスの結合部位でもありますが、腸管内の自然免疫の調整機能ももっています。

これらのことから、発表者は、腸内細菌叢の変動によって腸内の自然免疫の調整機能をもつACE2受容体の発現が低下し、腸内の炎症や栄養失調が引き起こされる可能性があることを述べています。

また、重症度が高くなるほど一部の酪酸産生菌が減少するという報告もあり、COVID-19患者は酪酸の代謝経路に変動をきたしている可能性も指摘されています。

一方で、重症度が高くなるほど、自己免疫疾患で増加する菌や炎症促進作用が報告されている菌が増加していることから、これらの菌が免疫を過剰に活性化させることで、重症化が進んでしまう可能性が示唆されています。


そして、2021年11月には名古屋大学の研究グループから、日本を含む10カ国953名の腸内細菌叢データと各国のCOVID-19による死亡率のデータの相関を分析した結果が発表されています。

これによると、腸内細菌叢に占めるコリンゼラ(Collinsella)属の比率が低いほど死亡率が高く、比率が高いほど死亡率が低いという関連性が見いだされたとのことです。

コリンゼラ属は、腸管内でウルソデオキシコール酸(USDA)を産生することが知られています。

USDAについては、コロナウイルスのACE2受容体への結合阻害、強力な抗酸化作用、抗アポトーシス(細胞の自然死)作用、重度の呼吸不全症の肺胞液排出を促す効果があると報告されています。

発表者は、コリンゼラ属が産生するUSDAにより、コロナウイルスに対する感染防御力が高まるとともに、免疫系が過剰に活性化した状態であるサイトカインストーム症候群を抑制することで、重症化した際にみられる急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を緩和させる可能性があると考察しています。





後遺症にも腸内細菌叢が関係している?

感染や重症化だけでなく、COVID-19の後遺症と腸内細菌叢との関連性についても研究されています。

2022年3月の香港の研究グループの発表によると、入院から6カ月経過後も後遺症が続く患者は、やはり一部の酪酸産生菌やコリンゼラ属が健常者と比べて減少していたとのことです。


このように、腸内細菌叢とCOVID-19の感染、重症化、後遺症との関連性を示唆する研究結果が報告されていますが、その共通点として、COVID-19患者や後遺症のある患者においては一部の酪酸産生菌が減少していたことと、コリンゼラ属が減少していたことが挙げられます。

また、今回は詳しく紹介していませんが、酪酸産生菌はワクチン接種後の抗体産生量と正の相関を示したとの報告もあります。

COVID-19の流行が長引くなか、腸内細菌叢の観点から感染や重症化を予防することができる可能性が見出されており、当社でもそうした研究に取り組んでいます。



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