健腸ナビ

納豆が腸内環境改善に役立つって本当?

菌の研究

2022.12.23

蒸した大豆に納豆菌を混ぜ、発酵させてつくる納豆。

日本の伝統的な発酵食品なので、毎日食べているという人も少なくないでしょう。

血液の凝固に不可欠なビタミンKや大豆由来のタンパク質に加え、食物繊維も豊富に含まれており、整腸作用があると考えられている納豆は、納豆菌そのものが含まれているため、優れたプロバイオティクス(健康維持に有効な微生物)としての効果が期待されています。

そこで当社では、納豆粉末の腸内細菌叢(腸内フローラ)への影響を明らかにする研究に取り組み、2022年にその成果を共同研究として論文発表しました。(詳細はこちら


納豆粉末摂取の効果

この研究では、佐賀県江北町に住む205名(男性100名、女性105名)を、男女それぞれで納豆粉末を2カ月間摂取するグループと摂取しないグループに分け、摂取による腸内細菌叢の変化を解析しました。

その結果、納豆粉末を摂取することで、男性ではビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)およびブラウティア(Blautia)の存在量が増え、女性ではビフィドバクテリウムが増えることが明らかになりました。

特に、納豆粉末を摂取した女性グループを、摂取開始前にビフィドバクテリウムの占有率が低かった群(LBi群)と高かった群(HBi群)に分け、納豆粉末摂取が腸内細菌叢に与える影響を比較したところ、LBi群のみでビフィドバクテリウムが有意に増加しました(図)。


”納豆加工食品摂取によるBifidobacteriumの占有率の変化”/


”納豆加工食品摂取によるBifidobacteriumの占有率の変化”/

また、このビフィドバクテリウムを増加させる効果は、男女ともに普段から納豆を含む発酵食品を食べる頻度が低く、ビフィドバクテリウムの存在量が少ない人で著しいことがわかりました。

ビフィドバクテリウムは酢酸や乳酸を産生して腸内のpHを低く保ち、病原菌の増殖を抑制することが知られており、腸内環境を整える菌のひとつです。

ブラウティアも、内臓脂肪面積が低い人ほど存在量が多く、大腸がんや糖尿病などの患者に比べて健康な人の腸内で多いため、有用な菌のひとつと考えられています。

また、当社が所有する日本人の大規模な腸内細菌叢データベースの情報からも、ビフィドバクテリウムとブラウティアは、糖尿病などの生活習慣病患者に比べ、健康な人の腸内で存在量が多い傾向がありました。

以上のことから、納豆粉末の摂取はビフィドバクテリウムやブラウティアの減少による腸内細菌叢の乱れを改善する可能性が高いことがわかりました。

納豆が有用なプロバイオティクスであることが示されたのです。


食品摂取による腸内細菌叢の改善

研究結果では、納豆粉末の摂取による腸内細菌叢の改善効果が、摂取前の腸内細菌叢におけるビフィドバクテリウムの存在量に左右されることを示しています。

つまり、とにかく納豆を食べれば誰でも腸内細菌叢の乱れが改善される、ということではなさそうです。

腸内細菌叢を改善するために食生活を見直すのであれば、まずは腸内細菌叢の状態(ビフィドバクテリウムに限らない、さまざまな腸内細菌の構成)を把握し、その内容をふまえて食品を選択することが望ましいといえるでしょう。

当社の腸内細菌叢検査・分析サービスでは、個人それぞれの腸内細菌叢の特徴をふまえて、病気の予防・改善に役立つと考えられる食品を例示する機能を備えています。



参考文献
Cao, Z.-H. et al. Biotechnol Adv 37, 223–238 (2019).
細井知弘. 日本醸造協会誌 98, 830–839 (2003).
Kono, K. et al. Nutrients 14, 3839 (2022).
Okai, S. et al. Nat Microbiol 1, 16103 (2016).
Ozato, N. et al. npj Biofilms Microbiomes 5, 1–9 (2019).
Chen, W. et al. PLoS One 7, e39743 (2012).
Larsen, N. et al. PLoS One 5, e9085 (2010).



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