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善玉菌と悪玉菌、完全なる善も悪も存在しない!

菌の真実

2021.07.30

人間の体によい効果をもたらす「善玉菌」と、悪い影響を及ぼす「悪玉菌」。

「善玉菌」「悪玉菌」という言葉は、腸内細菌研究の世界的な先駆者である、光岡知足(みつおか・ともたり)博士が生みの親とされています。

光岡博士は、宿主が生まれてからの日数に伴う変動のパターンと宿主との関係から、腸内細菌を次の3つの菌群に分けられるという学説を提唱しました。

① 生後やや遅れて出現するが、正常な腸内細菌叢において最も占有率が高くなる菌群(Ⅰ群)。宿主との間の長い進化の歴史の過程で高度に適応し、宿主の防御機構によって排除されることなく、一生にわたって密接な関係を保ち、一種の共生関係まで成立していると考えられる菌群。

② 生後まもなく出現し、最も占有率が高い菌叢を構成するが、まもなく次に出現する菌群と交代するかのように減少したのち、ほどほどの菌数に留まる菌群(Ⅱ群)。宿主の健康状態が悪くなったときに増加する傾向のある大腸菌やレンサ球菌が含まれる菌群。

③ 腸内細菌叢のなかでは少数派ではあるが、ウェルシュ菌、腸内細菌科(病原株)、緑膿菌、黄色ブドウ球菌など、明らかに病原菌のグループに属するもの。宿主の免疫力が低下すると、防御機構を破って他の臓器に侵入して“日和見感染”を起こし、病原性を発揮することのある菌群(Ⅲ群)。

腸内細菌には、よい働きをする菌もいれば悪い働きをする菌もいるという、いまでは常識となったこの考えは、1970年代初頭に発表された当時は、「善玉菌などいるわけがない」と考えていた多くの細菌学者から大批判を受けたそうです。

「一般に、腸内細菌のうち20%が善玉菌で、10%が悪玉菌。そして残りの70%がよくわからない菌で、善玉菌が優勢なときは悪い働きをしないが、悪玉菌が優勢になると悪い働きをする」

光岡博士に師事し、今日まで長年にわたって腸内細菌の研究に取り組まれてきた辨野義己博士はこのように説明してくださいました。

そして、抗生物質の投与や食生活の乱れなどによって有害な物質を産生する悪玉菌が増加し、善玉菌が減少することがよくないのは明らかですが、善玉菌が多すぎることも、決してよいことではないことが最近の研究によって明らかとなりつつあります。

また、腸内細菌叢は、個人差だけでなく、男女差も大きいこともわかってきました。

1,000種を超える菌によって構成された、極めて複雑な生態系である腸内細菌叢がヒトの生理・病理に及ぼす作用は、その複雑さゆえにいまだ解明されていないことが多くあります。

ただ、過去数万年にわたる人類の食生活の変遷の過程で最適化され、共生関係を形成してきた腸内細菌叢のバランスが、わずか数十年の間に生じた食生活の変化や抗生物質の多用によって、大きくかく乱されていることは間違いないでしょう。

このため、近年増え続ける生活習慣病や自己免疫疾患などの病気は、急激な食生活の変化や抗生物質の多用によって共生関係に破たんが生じた結果ではないかと考えることは理にかなっており、現にこうした病気に腸内細菌叢が関係していることを示唆する研究結果が続々と発表されています。

病気の予防・改善を図るためには、腸内細菌叢と病気の関係に関する研究をさらに進展させ、腸内細菌叢の構成などをコントロールする方法を確立することが不可欠となっています。



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