健腸ナビ

身体のつくりや機能と同じく、腸内細菌叢も男女で違う!

菌の研究

2023.03.06

男性は比較的大柄で筋肉質な人が多く、女性は比較的小柄でふっくらとした体型の人が多い。

そうした男性と女性のあいだにある違いを“性差”と呼びます。

性差は、実は腸内細菌叢にもあるって知っていましたか?

今回は、当社の研究によって明らかになった、腸内細菌叢の性差についてお話しします。


腸内細菌叢の性差は年齢で異なる

当社では、健康な日本人約6,500人の腸内細菌叢データを、性別(男性と女性)と年代ごと(20代から70代まで)に分け、性別・年代によって腸内細菌叢に違いがあるかを詳細に調査しました。

その結果、日本人の腸内細菌叢には性差があることが明らかに!

男性の腸内細菌叢では、フソバクテリウム(Fusobacterium)、メガモナス(Megamonas)、メガスファエラ(Megasphaera)、プレボテラ(Prevotella)、ステレラ(Sutterella)などに属する腸内細菌が多い傾向がありました。

そして、女性ではアリスティペス(Alistipes)、バクテロイデス(Bacteroides)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)、オドリバクター(Odoribacter)、ルテニバクテリウム(Ruthenibacterium)などに属する腸内細菌が多い傾向があることがわかりました。

ただし、こうした腸内細菌叢の性差は、30代以降、年代が高くなるにつれて小さくなっていくようです。

50代以下では女性のほうが男性よりも腸内細菌叢の多様性が高い傾向があったのですが、60代以上では、その差はそれほど大きくはなかったのです。


性差が年代で異なる要因は?

ではなぜ年代によって腸内細菌叢の性差の程度が異なるのでしょうか。

その答えは、“加齢による様々な変化と腸内細菌叢の関係性”にあるかもしれません。

日本人の腸内細菌叢の多様性は、離乳後、つまりさまざまな食品を摂取できるようになってから大幅に増加し、20代までは増え続けるのですが、思春期の性ホルモンの影響で多様性の増加に性別で違いが生じ、結果として腸内細菌叢に性差が現れている可能性があります。

そして、50代頃では加齢やライフスタイルの変化などの影響を受けつつも、腸内細菌叢には性差があるままですが、さらに年齢を重ねると、女性の場合は閉経によって女性ホルモンとして知られるエストロゲンの分泌が低下し、それが腸内細菌叢に影響を与えていることが考えられます。

また、高齢者では腸の生理機能が変化することから腸内細菌叢が影響を受けると思われます。

このような加齢による生理的および身体的特徴の変化が、腸内細菌叢の性差を小さくする要因となっているのかもしれません。


性差の視点をもつことの重要性

今回のコラムで、腸内細菌叢の性差について注目した理由は、近年、病気の発症や進行に腸内細菌叢が関係していることが明らかになっているという背景もあります。

腸内細菌叢に性差があるならば、病気に関連する腸内細菌も性別で異なるのでは……?

そこで当社では、日本人の大規模な腸内細菌叢データを用いて、12の病気(潰瘍性大腸炎、2型糖尿病、胃炎、逆流性食道炎、腎臓病、肝臓病、不整脈、狭心症、緑内障、気管支喘息、花粉症、アトピー性皮膚炎)と関連する可能性のある腸内細菌を性別・年代別に調査しました。

その結果、それらの腸内細菌の多くは、やはり性別および年代で異なりました。

ということは、腸内細菌叢に関する研究や病気の予防・治療法、腸内細菌叢の検査サービスなどにおいて、腸内細菌叢には性差があるということを前提にしていないと、人によっては十分な効果が得られないなどの不利益が生じてしまうのではないでしょうか。

そうならないためにも、腸内細菌叢に関連する研究やサービスには、性差を考慮した「ジェンダード・イノベーション」の視点が重要なのです。


当社の取り組みについて

以上のことをふまえ、当社の腸内細菌叢の検査・分析サービス『健腸ナビ🄬』では、腸内細菌叢の性差を考慮した男女別の分析を行っております。

腸内細菌叢の性差に関する研究内容の詳細に関しては、当社の論文またはプレスリリースをご参照ください。



参考文献
Hatayama, K. et al. Biomedicines 11, 376 (2023).
Odamaki, T. et al. BMC Microbiol 16, 90 (2016).
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Bischoff, S. C. Curr Opin Clin Nutr Metab Care 19, 26–30 (2016).
Salles, N. Dig Dis 25, 112–117 (2007).



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