健腸ナビ

病気のリスクを腸内細菌叢から分析!

菌の研究

2023.04.18

アレルギー、自己免疫疾患、肥満や糖尿病などの生活習慣病、そして肝疾患、心疾患、がん、神経・精神疾患……、私たちの健康を脅かす多くの病気が腸内細菌叢との関係を指摘され、その関連性を解き明かすべく、いまも研究が進んでいます。

しかし、関係があるとわかっていながら、腸内細菌叢の組成から病気のリスクを分析する方法はこれまで確立されていませんでした。

なぜなら、腸内細菌叢は1,000 種類以上の多種多様な腸内細菌が相互作用しながら生息している複雑な生態系。この多種多様な腸内細菌と病気との関連性の全体像を捉えるのが難しかったのです。

そのようななか当社では、病気に関係する腸内細菌の組成データから病気のリスクを推定する方法を開発しました。


構造方程式モデルを用いて分析

この方法で用いるのが構造方程式モデル(SEM;Structual Equation Modeling)。

病気との関連性が示された腸内細菌について、作用が似たものをひとつのグループ(因子)にまとめ、そのグループと病気との関連性を分析するのです。

前述のように一つひとつの腸内細菌と病気との関連性のみで腸内細菌と病気の関連性の全体像を捉えることは難しくとも、複数の腸内細菌が相互作用しながら病気に影響を及ぼす構造をグループとして表現することで、腸内細菌叢と病気の関連性の全体像を分析できるようになりました。


”腸内細菌叢と疾病の関係を表す構造方程式モデル(SEM)の概念図”/


”腸内細菌叢と疾病の関係を表す構造方程式モデル(SEM)の概念図”/

そして2023年1月、アトピー性皮膚炎(以下「アトピー」)を例として、この分析方法を示した論文を国際学術誌『Frontiers in Microbiology』で発表。

アトピーを患う日本人女性45名と、健康な日本人女性321名の腸内細菌叢の組成データから、女性のアトピーの発症や症状の悪化には、体内の炎症反応の促進に関わるアリスティペス(Alistipes)、ブチリシモナス(Butyricimonas)、コプロバクター(Coprobacter)が関与しており、アトピーの抑制や緩和には、炎症反応の抑制に関わるアガトバクター(Agathobacter)、フシカテニバクター(Fusicatenibacter)、ストレプトコッカス(Streptococcus)が関与することを特定しました。

そして、これらの腸内細菌のうち、前者を腸内細菌叢因子1、後者を腸内細菌叢因子2としてモデルを作成し、腸内細菌の組成データを投入することで、病気のリスク値が計算できることを示しました。
(詳細は、当社の論文またはプレスリリースを参照)

論文ではアトピーを例としていますが、それ以外の多くの病気についてもモデルを作成し、リスクを分析することが可能です。

なお、腸内細菌叢は男女で異なるので、男女別・病気別にモデルを作成します。
(コラム「身体のつくりや機能と同じく、腸内細菌叢も男女で違う!」参照)


病気のリスクを分析する重要性

では、この方法によって分析した病気のリスクは、健康維持にどう役立てることができるのでしょうか。

腸内細菌叢の検査・分析サービス「
健腸ナビ」のレポートには、約30の病気のリスクを分析した結果が掲載されています。

”健康者と分析対象疾病の罹患者における疾病リスク値分布の例”/


”健康者と分析対象疾病の罹患者における疾病リスク値分布の例”/

分析の結果、現在かかっている病気のリスク値が高い場合、腸内細菌叢がその病気の原因のひとつとなっている可能性があります。その場合は、個別に提案される食品(成分)を摂取することで、リスクを下げる方向に腸内細菌叢が変動し、病気の改善・緩和や再発予防につながる可能性があります。

一方で、現在かかっていない病気のリスク値が高いこともあります。それは、現在の腸内細菌叢が原因となってその病気にかかる可能性があることを示しています。

このように、腸内細菌叢から分析された病気のリスクから、未病段階における病気の予防への取り組みや、病気の早期発見につなげることが可能となるのです。


参考文献
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