腸内細菌叢(腸内フローラ)にアプローチしてストレスから回復?!
菌と健康
みなさんは「五月病」になっていませんか?
入学や就職、引っ越しなどにより新生活がスタートして1〜2カ月ほど経つと、寂しい気持ちが強くなったり、うつ傾向により無気力を感じたりする五月病になることがあります。
この五月病という言葉、実は医学的な病名ではありません。
大学新入生が5月の連休明け頃から急激に無気力、無関心になることから名づけられた社会的な用語であり、新しい環境に適応できず、ストレスが生じて引き起こされるとされています。
こうした五月病に限らず、ストレスがさまざまな心身の不調につながってしまうのはご存知の通り。
健康を維持するためには、ストレスともうまく付き合っていくことが大切なのです。
では、ストレスへの対処はどのようにしたらよいのでしょうか?
そのカギは腸内細菌叢(腸内フローラ)にあるかもしれません。
ストレスからの回復力と腸内細菌叢
ストレスが原因となって引き起こされる不調には、不安障害やうつ病などの気分障害がありますが、ストレスを抱えているすべての人が発症するわけではないことは言うまでもありません。
これは、ストレスに対して感情的な行動の変化を起こすことなく対処する“ストレスからの回復力”が、人によって異なるためです。
そして実は、このストレスからの回復力もまた、腸内細菌叢が関連している可能性があることが近年の研究から明らかになってきました。
その研究のひとつに、アカゲザルの幼児を対象とした研究があります。
幼児サルを母親から分離し、ほかの幼児サルの近くのケージへ個別に入れたところ、母親から離されるというストレスを受けた3日後に腸内細菌叢が変化し、特に乳酸菌が明らかに減少したとのこと。
腸内細菌叢の変化は、ストレスによる感情的な行動とも関係していたそうです。
一方でその幼児サルの腸内細菌叢は、5日目には分離前の構成に戻ったとの報告がありました。
この研究だけでなく別のさまざまな研究からも、ストレス下では腸内細菌叢の構成が変化し、それがストレスの軽減とともに、もとの状態に戻ることがわかってきています。
また、視点を変えれば、次のようにも考えられます。
ストレスによって変化してしまった腸内細菌叢をもとの状態に戻すことは、ストレス回復力の向上につながるのでは。
実際に、これまでに行われた研究では腸内細菌叢をもとの状態に戻す効果が期待されるプレバイオティクスやプロバイオティクスの摂取が、ストレスによる感情的な行動を軽減することがわかっています。
例えば、ストレスによる感情的な行動が増加していたマウスでは、プレバイオティクスであるフラクトオリゴ糖とガラクトオリゴ糖の摂取によってそのような行動が減少し、改善がみられたそうです。
ヒトを対象とした研究では、2種類のプロバイオティクス(ラクトバシラス・ヘルベティカス[Lactobacillus helveticus]R0052とビフィドバクテリウム・ロンガム[Bifidobacterium longum]R0175)を30日間摂取したことで、不安やうつなど、ストレスの自覚症状が軽減されたという例があります。
ストレスを感じるときの食事
ストレスを感じているときは、ジャンクフードへの欲求が高まり、その結果として不健康な食事(例えば、飽和脂肪酸が多く高カロリーな食事など)につながる可能性があるとされています。
そうした不健康な食事では、ストレスによって変化してしまった腸内細菌叢をもとの状態に戻すことは難しいでしょう。
ストレスを感じるときこそ、健康的な食事を心がけることが大切なのです。
例えば、果物、野菜、豆類、食物繊維を含む食品を多く取り入れ、魚とオリーブオイルを適度に摂取する地中海式食事法が健康的な食事の一例として参考になりそうです。
腸内細菌叢からストレスに対処する
これからは、ストレスとうまく付き合いながら健康を維持していくためにも、腸内細菌叢を意識した生活を始めてみませんか。
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このようなサービスを活用し、腸内細菌叢からストレス対策に取り組むこともおすすめです。
参考文献
・ブリタニカジャパン株式会社. ブリタニカ国際大百科事典 : 小項目版 (2009).
・後田穣. NICかわらばん 197, (2005).
・Bear, T. et al. Microorganisms 9, 723 (2021).
・Bailey, M. T. et al. Dev Psychobiol 35, 146–155 (1999).
・Burokas, A. et al. Biol Psychiatry 82, 472–487 (2017).
・Messaoudi, M. et al. Br J Nutr 105, 755–764 (2011).
・Madison, A. et al. Curr Opin Behav Sci 28, 105–110 (2019).
・Gubert, C. et al. Neurobiol Dis 134, 104621 (2020).
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