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ミルクで育つ赤ちゃんの腸内細菌叢には特徴がある?!母乳に近い人工乳とは - 母子の腸内細菌叢④授乳【後編】

菌と健康

2024.03.22

本コラムでは「母子の腸内細菌叢シリーズ」として、妊娠・出産・授乳に至るまでの、母子の腸内細菌叢(腸内フローラ)についてご紹介します。

シリーズ第4回にあたる「授乳」をテーマとした前回のコラム(前編)では、母乳がビフィズス菌の供給源になることや、赤ちゃんの腸内細菌叢(腸内フローラ)の形成には母乳中のヒトミルクオリゴ糖やラクトフェリンなどが役立つことを説明しました。

帝王切開と経膣分娩では子供の腸内細菌叢に差があるのですが、この差が母乳によって小さくなることもわかっています。
(コラム「母子の腸内細菌叢④授乳(前編)」参照)

今回のコラム(後編)では、ミルクで育った赤ちゃんの腸内細菌叢や、母乳に近い人工乳の開発などについてご紹介します。


ミルクで育つ赤ちゃんの腸内細菌叢の特徴とは?

母乳栄養児(母乳で育てられた赤ちゃん)と人工栄養児(母乳の代わりに育児用調整粉乳のみで育てられた赤ちゃん)では腸内細菌叢が大きく異なります。

前編のコラムでご紹介した通り、母乳栄養児ではビフィズス菌優勢の腸内細菌叢になるのに対し、人工栄養児ではビフィズス菌が属するアクチノマイセトータ門(Actinomycetota門)ではないファーミキューテス門(Firmicutes門)※a の細菌の割合が高くなり、成人と類似した腸内細菌叢となっています。

このような乳児期の腸内細菌叢の構成は、将来的にアレルギー、喘息、肥満などの疾病にかかるリスクにも影響を与える可能性があると、これまでの研究から分かってきています1)2)。

例えば、生後2年間にアレルギーを発症した小児では、アレルギーのない小児に比べて、生後1年目までの腸内のビフィズス菌の割合が低かったことが示されています3)。

また7歳児の時点で過体重の子供は、生後1年目でのビフィズス菌の検出率が、標準体重の子供に比べて低かったと報告されています4)。

いずれの研究からも、乳児期の腸内細菌叢においてビフィズス菌の割合が大きい(=母乳栄養児の腸内細菌叢の状態である)ことが、子供の健康維持に大切だと示されています。


母乳に近い人工乳が開発されている?

母乳は赤ちゃんにとって好ましい腸内細菌叢形成につながるものの、さまざまな事情から母乳を十分に与えることができない場合もあるでしょう。

そのような背景から、腸内細菌のエサとなるプレバイオティクス配合の人工乳や、乳児用プロバイオティクス製品の開発が積極的に行われています。

例えば、ビフィズス菌を増殖させるためには難消化性のラクチュロースを配合した人工乳の摂取が良いとされています。

難消化性ラクチュロースにより赤ちゃんの腸内のビフィズス菌を増加させること、また、これにともなって腸内の有機酸濃度が増加してpHが低下することが報告されています5)。

その他にも、ガラクトオリゴ糖やフラクトオリゴ糖などの難消化性オリゴ糖をプレバイオティクスとして配合した人工乳や、ビフィズス菌を配合した人工乳、また、一般的な人工乳に添加できるサプリメントタイプのプロバイオティクス製品も開発・商品化されているようです。

前編のコラムでご紹介した、赤ちゃんの腸内細菌叢の形成に大切なヒトミルクオリゴ糖も、工業的に生産する技術の開発が行われています。

ヒトミルクオリゴ糖は構造や組成が複雑なため、工業的な大量生産が困難でしたが、約250種といわれているヒトミルクオリゴ糖のうち7種類が2024年時点で生産可能となっています6)。

2017年以降、欧米各国や一部のアジア諸国ではヒトミルクオリゴ糖含有の人工乳が商品化・販売されていることから、日本においても商品化が待ち望まれています。

最後に

免疫系の発達していない赤ちゃんに、母乳が免疫力を与えることは以前から知られていました。

最近では、そこに赤ちゃんの腸内細菌叢の形成とそれによる免疫系の発達が関係していることが分かってきています。

この健腸コラムでは「母子の腸内細菌叢シリーズ」として4回にわたり、妊娠・出産・授乳に至るまでの、母子の腸内細菌叢について紹介してきました。お母さんと赤ちゃんの腸内細菌叢について、より理解を深めたい方はそれぞれの記事をご覧ください。

腸内細菌叢は大人から赤ちゃんまで、人の健康に大きく関わっています。

ご自身やご家族の腸内細菌について知りたい方は、当社の腸内細菌叢の検査・分析サービス「SYMGRAM」「健腸ナビ」を是非お役立てください。


用語説明
※a:Firmicutes門は、最新の分類ではBacillota門(バシロータ門)に変更されています。


参考文献/参考資料
1)Milani, C. et al. Microbiol Mol Biol Rev 81, e00036-17 (2017).
2)van den Elsen, L. W. J. et al. Front Pediatr 7, 47 (2019).
3)Björkstén, B. et al. J Allergy Clin Immunol 108, 516–520 (2001).
4)Kalliomäki, M. et al. The American Journal of Clinical Nutrition 87, 534–538 (2008).
5)堀米綾子 et al. 腸内細菌学雑誌 vol. 33 1–14 (2019).
6)氏原哲朗 et al. Glycoforum 25, A7J (2022).



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