腸内細菌が花粉症の新しい治し方に?!腸内フローラから花粉症対策
菌と健康
鼻がムズムズ…目がかゆい…辛い症状で多くの人を悩ませる花粉症。
実は花粉症の発症には腸内フローラが関係していることがわかってきました。
さらに、乳酸菌やビフィズス菌を利用した新たな花粉症の治療法が期待されています。
今回のコラムでは、花粉症と腸内フローラとの関係や、花粉症の治療方法などについてご紹介します。
花粉症の基礎知識をご紹介
花粉症とは、花粉を抗原とする季節性のアレルギー疾患です1)。
花粉症は、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどのアレルギー性鼻炎や、目のかゆみ、充血、涙、目やになどのアレルギー性結膜炎の症状を引き起こします。
また、喘息やアトピーの症状を悪化させることもあります。
●花粉症の人はどれくらいいる?
2019年に実施された全国の耳鼻咽喉科医とその家族を対象とした鼻アレルギーの調査では、花粉症の人の割合は42.5%と報告されています2)。
とりわけスギ花粉症の人が多く、その割合は38.8%とのこと。
なんと日本人の3人に1人がスギ花粉症と推定され、多くの日本人がスギ花粉症に悩まされていることがわかったのです。
●花粉症の時期はいつから?
このように多くの国民を悩ませるスギ花粉。
その飛散は春の時期、2月~4月頃がピークとなります。また、少量ですが秋にも飛散することがあるようです1)。
同じ春の時期にはヒノキ花粉も飛散し、こちらも花粉症の大きな原因となっています。
また、カモガヤやオオアワガエリなどのイネ科の花粉は種類が多く、春から初秋までの長い期間飛散します。
さらに、ブタクサやヨモギなどのキク科の花粉や、カナムグラの花粉は、夏の終わりから秋にかけて飛散しています。
このように、ほぼ一年を通して何かしらの花粉が飛散していることから、春だけでなく、一年中花粉症に悩まされる人もいるようです。
花粉症になる原因は?
ここまで花粉症についての基礎知識をお話してきましたが、そもそもなぜ花粉症になるのでしょうか?
花粉症になる人もいれば、ならない人もおり、その違いはどこにあるのでしょうか?
そこで、以下では花粉症になるメカニズムをご説明します。
●花粉症を発症するきっかけ
実は、飛散していた花粉が体内に入っただけでは、すぐに花粉症になるわけではありません。
体内に花粉が侵入してくると、体では免疫が働いてそれを異物と認識し、この異物(抗原)に対する抗体がつくられます1)。
数年から数十年にかけて同じ種類の花粉が体に入ることで、抗体は花粉症の発症に十分な量になります。
この状態を「感作(かんさ)が成立した」と言います。
感作が成立した後、再び同じ種類の花粉が体の中に入ってくると、過剰な免疫反応が起こり、くしゃみや鼻水、涙などの症状がでてくるようになり、花粉症を発症します。
花粉症には腸内環境が関係していた
上記のように感作が成立することで花粉症が発症しますが、発症には実は腸内環境も関係していることがわかっています。
近年の研究から、腸内フローラの多様性が低下したり、腸内フローラの乱れ(ディスバイオシス)が起きたりすることが、この感作に重要な役割を果たしている可能性がわかってきました6),10)。
例えば、スギ花粉症の人では、腸内フローラの乱れとしてバクテロイデス目(Bacteroidales目)の腸内細菌が多いという特徴を示すことが報告されています。
まだメカニズムは不明ですがバクテロイデス目の腸内細菌が免疫のバランスに影響を及ぼす可能性があるようです6)。
そのため、花粉症の予防として、腸内フローラを整えて、腸内環境を良好に保つことを意識したライフスタイルをおくることが重要です。
また、すでに花粉症になっている人も例外ではありません。
花粉症は複数種の植物の花粉が原因となる場合があり、すでに花粉症の人でも別の植物を原因とした花粉症を発症する可能性があります。
つまり、将来、別の花粉を原因とする花粉症を発症しないように、日常的に腸内環境を整えて予防に取り組むことが大切と言えます。
花粉症の治療方法として乳酸菌に着目!
花粉症を治療する方法としては、経口薬や目薬などによる薬物療法が一般的ですが、これらは症状を軽減させるための対症療法なので、根本的に花粉症が治るわけではありません。
一方、アレルゲン(抗原)である花粉を少量投与することで、体をアレルゲンに慣らしていくというアレルゲン免疫療法というものもあり、こちらは対処療法ではない治療法のため花粉症の根本的な解決になることが期待されています。
しかし、治療が3~5年と長期に渡ることや、一定の割合で効果が得られない方がいるなどの課題もあるようです3)4)。
そのようななか、着目されつつあるのが腸内環境を整えて花粉症対策をする方法。
特に、乳酸菌やビフィズス菌を活用することによる花粉症対策の有効性が示されてきています。
いくつかの研究では、乳酸菌やビフィズス菌の特定の菌株が、マクロファージや樹状細胞などに認識されることで自然免疫系の活性化と免疫のバランス調整につながり、花粉症のアレルギー症状を改善することが示されています5),6)。
具体的には、スギ花粉症の人が以下の菌をプロバイオティクスとして摂取すると、症状がある程度改善したとの報告があります7)。
・ラクトバシラス・パラカゼイKW3110株(Lactobacillus paracasei KW3110)
・ラクトバシラス・アシドフィルスL-55株とL-92株(Lactobacillus acidophilus L-55/ L-92)
・ラクトバシラス・カゼイシロタ株(Lactobacillus casei Shirota)
・ビフィドバクテリウム ロンガムBB536株(Bifidobacterium longum BB536)
など
上記の菌株を含むヨーグルトや乳酸菌飲料、サプリメントも販売されているため、花粉症にお悩みの方は商品のパッケージなどでチェックしてみるとよいでしょう。
また、乳酸菌生成エキスを摂取することでスギ花粉症の改善が見られたという報告もあり、この治療法についても有望と期待されています8),9)。
このように、これまでの投薬やアレルゲン免疫療法以外の、新しい花粉症の治し方として、将来的には乳酸菌の利用が一般的になる可能性があります。
腸内環境を整えるために
ここまでの内容から、花粉症対策として、腸内フローラが乱れないよう腸内環境を整えることの重要性がわかりました。
腸内環境を整えるためには、果物や野菜、全粒穀物などの食物繊維を多く含む食品、また、脂質の多すぎない魚、乳製品、肉などをバランスよく摂取することが大切です10)。
また、先にお伝えしたような乳酸菌やビフィズス菌を含むヨーグルトなどのプロバイオティクス食品の摂取も意識しましょう。
ご自身の腸内フローラの状態に合わせた食生活の改善ができれば、より効果が期待できることでしょう。
腸内フローラを調べて花粉症対策
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参考文献
1)環境省 花粉症環境保健マニュアル-2022年3月改訂版- https://www.pref.ishikawa.lg.jp/kenkou/allergy/documents/2022_full.pdf (2022).
2)松原篤 et al. 日本耳鼻咽喉科学会会報 123, 485–490 (2020).
3)大久保公裕. アレルギー 70, 948–954 (2021).
4)神前英明. 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報 126, 877–879 (2023).
5)指原紀宏. 腸内細菌学雑誌 27, 197–202 (2013).
6)Nomura, A. et al. Allergol. Int. 69, 437–442 (2020).
7)Uchida, K. et al. Pathog. Basel Switz. 11, (2022).
8)伊藤宏文 & 貴家康尋. 診療と新薬 59, 45–51 (2022).
9)Ito, H. & Yasuhiro, S. Cureus 15, e41374.
10)Yamaguchi, T. et al. Allergol. Int. Off. J. Jpn. Soc. Allergol. 72, 135–142 (2023).
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