健腸ナビ

不妊の原因には腸内フローラも関連!?―不妊症と腸内フローラ〈前編〉―

菌と健康

2024.07.17

不妊の原因は男性と女性のそれぞれに存在するものです。

近年の研究からは腸内細菌叢(腸内フローラ)の異常(ディスバイオシス)が不妊の原因に関連することが明らかとなってきました。

腸活に取り組むことで、男性と女性どちらのお悩みにも対処することができる可能性があると考えられます。

本コラム「不妊症と腸内フローラ」シリーズ前編・中編では、子宮内膜症や月経不順、細菌性膣症、多嚢胞性卵巣症候群といった女性の不妊症と関連することと腸内細菌叢の関連性について着目していきます。

男性の不妊症と腸内細菌叢の関連については後編のコラムでご紹介しますので、妊活中の方は、そちらのコラムも含め、是非パートナーの方とともにご覧ください。


子宮内膜症と腸内細菌の関係とは?

子宮内膜症とは、子宮の内側を覆っている子宮内膜という組織に似たものが、子宮以外の部位にできる疾患のことです。

子宮内膜症がある部位も月経の時に出血をするのですが、その出血を体外に出すことができない場合は炎症や周辺組織との癒着の原因になります。

そのため主な症状は、腰痛・腹痛・性交痛などの痛み、不妊などです。

実際に不妊症の女性のうち25%~50%の方が子宮内膜症を患っていると推定された報告があります1),2)。

子宮内膜症の発症には主に以下のような要因があると考えられています1)。
・炎症
・免疫調節不全
・ホルモン(エストロゲン)のアンバランス

そして最近、上記の要因に腸内細菌叢が関与する可能性が指摘されています1)。

腸内細菌叢の異常による腸の上皮のバリア機能低下は、炎症の発生や免疫調節不全と関連します。
(コラム「さまざまな病気を引き起こす、ディスバイオシスに要注意!」ご参照)

また、腸内細菌が起こす代謝反応はエストロゲンの生成に関連しているため、腸内細菌叢に異常があるとエストロゲン量のバランスにも影響します。

このように、腸内細菌叢の異常が子宮内膜症の原因と関連して、不妊症にも影響することが考えられます。


腸内細菌がエストロゲンや月経不順に影響?!

エストロゲンは子宮内膜の厚さと質、つまり胚の着床に影響を及ぼす女性ホルモンです。

そのため、体内のエストロゲンがアンバランスな状態だと、妊娠に直接影響を与える可能性があります。

一般的に未利用のエストロゲンは、肝臓で処理され胆汁や尿中に排出されます。

しかし以下のような腸内細菌が増えると、これらの菌の働きで排出されず、体内でエストロゲンが再利用されてアンバランスの原因となってしまうのです。
・エシェリキア・コリ(Escherichia coli、和名:大腸菌)
・バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis
・ストレプトコッカス・アガラクティエ(Streptococcus agalactiae

実際に、ある研究において、健常者のグループと子宮内膜症患者のグループで腸内細菌叢が比較された結果、子宮内膜症患者のグループでは、エストロゲンのアンバランスに関係するエシェリキア属の占有率が高いことが報告されました3)。

このような流れで、女性ホルモンであるエストロゲンの量が変化すると月経不順にもつながります。

腸内細菌叢の異常からエストロゲン量の変化、月経不順が起こると、受精卵が着床しにくくなるなどの妊娠に関する問題につながることが考えられるでしょう。


以上のように、腸内フローラの異常は、子宮内膜症の発症やエストロゲンのアンバランスに関連し、それが不妊症へとつながる可能性があるのです。

この他にも、腸内フローラの異常は、膣内細菌叢(膣内フローラ)の乱れに関連し不妊につながる可能性や、不妊の原因のひとつである多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)にも関連することが知られています。

これらについては次回のコラム「不妊症と腸内フローラ〈中編〉」でご紹介いたします。


なお、本コラムで示された「エストロゲン」ですが、このエストロゲンに似た働きがある物質として、「エクオール」が知られています。

腸内細菌叢の検査と分析「健腸ナビ」ではエクオール産生菌の割合が分析できます。
さらに、女性不妊症をはじめとした、30以上の病気のリスクを分析することも可能です。

また、別コラム「話題の成分「エクオール」を体内でつくれない人がいる?!」では、エクオールと腸内細菌の関係についてご紹介していますので、そちらも是非ご覧ください。


参考文献
1)Salliss, M. E. et al. Hum. Reprod. Update 28, 92–131 (2021).
2)Bulletti, C. et al. J. Assist. Reprod. Genet. 27, 441–447 (2010).
3)Ata, B. et al. Sci. Rep. 9, 2204 (2019).



自宅で受けられる腸内細菌叢の検査・分析サービス「健腸ナビ」では、大腸がんや認知症、アトピー性皮膚炎など、約30の病気のリスクを分析。リスクだけでなく、あなたにおすすめの食品情報を参考にして健康づくりに取り組むことができます。
▶詳しくはこちら


”自宅で受けられる腸内細菌叢の検査・分析サービス「健腸ナビ」”/


”自宅で受けられる腸内細菌叢の検査・分析サービス「健腸ナビ」”/