腸内環境はどのくらいで変わる?腸内環境改善のコツは「継続」!
菌の真実
「腸内環境を整えよう!」といったフレーズを最近よく耳にします。
しかし、具体的に腸内環境が健康にどう影響するのか、どんな方法で整えられるのか、どれくらい続ければ変わるのかなど、よくわからないことも多いのではないでしょうか?
このコラムでは、それらの疑問についてわかりやすく解説します。
腸内環境とは?
腸内環境というと、小腸、大腸などを含みますが、多くの場合は大腸内の環境のことを指します。
腸内環境を構成するのは、大腸に存在する多種多様な腸内細菌(その集まりを腸内フローラと呼びます)とその代謝物、毎日摂取される食事成分、消化管からの分泌物などです。
環境を維持するために多くの要素が複雑に関連して相互にバランスを保っています1)。
そのため、腸内環境が悪いというのは、このバランスが崩れている状態を指します。
腸内フローラは腸内環境を表している!
腸内環境とは、腸内細菌に加え、上記のような様々な物質を含むものですが、腸内環境に対する腸内フローラの影響は非常に大きいです。
そのため、腸内環境≒腸内フローラと考えてもよいでしょう。
以降は腸内フローラを中心に、腸内環境の変化についてお伝えしていきます。
腸内環境が悪いとどうなる?
腸内環境が悪いということは、腸内フローラも乱れています。
このように腸内フローラが乱れている状態を「ディスバイオシス」と呼びます。
このディスバイオシスは様々な病気と関連があるとされています。
例えば、炎症性の疾患、アレルギー、自己免疫疾患、肥満や糖尿病などの生活習慣病、がん、うつ病、軽度認知障害(MCI)などが挙げられます。
そのため、腸内フローラを整え、腸内環境を良い状態に保つことが、健康維持において重要です。
腸内フローラが変わる主な3つの原因
私たちの身体には内部環境を一定の状態に保ち続けようとする「恒常性」という性質があります。
腸内フローラについても、この恒常性によって大きな変化が起こらないように維持されており、成人後は比較的安定していると言われています。
このように腸内フローラは基本的に維持されるものですが、変化することもあります。
ここでは腸内フローラが変化する主な3つの原因をお伝えします。
この変化は、腸内環境の悪化につながることもありますので、以下で詳しく解説します。
●食生活を大きく変える
食事をすると腸内フローラは変化しますが、普段と同じ食事であれば変化は一時的で、腸内フローラの大きな変化にはつながらないようです。
一方で、旅行先で普段食べないものを食べるなど、極端な食生活の変化が続くと、腸内フローラの構成は大きく変化します。
ある研究では、先進国から発展途上国へ旅行した際に、旅行期間中の腸内フローラが大きく変化したとされています2)。
ただし、旅行から戻った後は、2週間で元の腸内フローラに戻ったとのことです。
●病気にかかる
病気にかかることも腸内フローラが変化する原因となります。
例えば食中毒にかかった場合、腸内フローラが大きく変化することが報告されています2)。
この例では、抗菌薬は使用されていなかったので、食中毒になったことによって腸内フローラが変化したようです。
また、この変化は発症後の3カ月以内では元に戻らず、腸内フローラの構成が違うものに移り変わったことも報告されています。
●抗菌薬(抗生物質)を使用する
抗菌薬(抗生物質)は細菌の細胞を壊したり、増殖を抑制したりする薬です。
そのため、抗菌薬を使用すると腸内細菌もすぐにダメージを受け、腸内フローラが大きく変化します。
多くの場合、抗菌薬の使用後2~4週間以内に腸内フローラが元の状態に戻ると考えられています。
しかし、薬の種類によっては1年近く元に戻らない、または異なる構成に変わってしまうこともあるようです。
(コラム「抗生物質が腸内細菌叢(腸内フローラ)を乱す!?」参照)
腸内フローラを整えて腸内環境を改善する方法
健康に大きな影響のある腸内フローラですが、改善しバランスを整えるにはどうすればよいのでしょうか?
それには、腸内フローラが変わる原因で挙げたもののひとつ、食生活の変化をうまく利用するのがよいでしょう。
そこには特定の食品成分が含まれるプレバイオティクス、特定の乳酸菌などの有用な菌が含まれるプロバイオティクスを摂取するという方法もあります。
以下ではそれらについてご紹介します。
●食生活を改善する
普段の食生活が腸内フローラを乱し、腸内環境を悪化させている可能性があります。
腸内フローラを整えるには、食物繊維を豊富に含む果物、野菜、豆類、穀物、ナッツなどを積極的に摂ることが有効です3)。
特に、普段摂っていないような食品を摂り入れると、腸内フローラが大きく変わるようです。
●プレバイオティクスの摂取
プレバイオティクスは、腸内の有用菌を増殖させたり活性化させたりすることで、腸内フローラのバランスを改善・維持し、私たちの健康に役立つ食品成分のことです4)。
プレバイオティクスとしては、イヌリン、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖などといった食物繊維が知られています。
多くの場合、プレバイオティクスを摂取すると、ビフィズス菌として知られるビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium属)や、ラクトバシラス属(Lactobacillus属)をはじめとした乳酸菌が増えることが知られおり、腸内フローラの構成に良い影響を与えます。
また、それだけでなく、増殖した菌が健康に有益な代謝物を作りだすことで、健康にも良い影響を与えるとされています3)。
●プロバイオティクスの摂取
プロバイオティクスとは、健康に有益な菌を生きた菌として摂取できるものです4)。
例えば、ビフィドバクテリウム属や、ラクトバシラス属などの特定の種類の菌がプロバイオティクスとして用いられています。
プロバイオティクスには、ヨーグルトやサプリメントのような製品として利用できるものもあります。
腸内環境が変わる期間は?
上記のような食品やプレバイオティクス・プロバイオティクスを摂ると、どのくらいで腸内フローラが変化し、腸内環境が変わるのでしょうか?
いくつかの研究では、食品やプレバイオティクス・プロバイオティクスの摂取により、2週間程度で腸内フローラが変化することが示されています。
しかし、どの場合も摂取を中止すると、しばらくして元の腸内フローラに戻ってしまうことが示されています5),6)。
腸内環境を改善し整えるには継続が必要
ここまでの内容から、腸内環境や腸内フローラは改善に取り組むと2週間程度で変化する可能性があることがわかりました。
ただし、改善の取り組みが散発的であったり、途中で止めてしまったりすると、改善を実感する前に元の状態に戻ってしまいます。
つまり、腸内フローラを変えて腸内環境を改善するには、継続的に取り組むことが必要です。
あなたの腸内環境をチェックするには?
そもそも自身の腸内環境は良いのか悪いのか?
まずは腸内フローラを調べてご自身の腸内環境の一部を見える化してみることをおすすめします。
(コラム「腸内フローラ検査でわかることとは?特徴や費用について詳しくご紹介」参照)
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参考文献
1)鈴木秀和. 日本消化器病学会雑誌 117, 840–855 (2020).
2)David, L. A. et al. Genome Biol. 15, R89 (2014).
3)Leeming, E. R. et al. Nutrients 11, 2862 (2019).
4)萩達朗. 日本食品科学工学会誌 70, 309–309 (2023).
5)Liu, F. et al. Sci. Rep. 7, 11789 (2017).
6)Hasan, N. & Yang, H. PeerJ 7, e7502 (2019).
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