

おならがよく出る…原因と対策とは?腸内細菌も関係!
菌の真実
「おならがよく出るな」「こんなに出て大丈夫?」といったお悩み、あなたは抱えていませんか?
日常的な体の反応ではありますが、時として気になるものです。
実は、このおならの発生には腸内細菌が深く関係しています。
今回のコラムでは、おならの回数が増える主な原因、腸内細菌とガスの産生メカニズム、そして今日から実践できるおならの量を減らすための具体的な対策まで、分かりやすく解説していきます。
おならが増えるのはなぜ?回数が多い時のチェックポイント
おならの回数が増えたり、普段と違う状態が続くと、ご自身の健康状態に不安を感じることもあるかもしれません。
まずは、おならの正常な回数の範囲と、その回数が増える主な原因を確認していきましょう。
●おならの正常な回数とは?
1日のおならの回数は個人差が大きいものです。平均的には14回程度、多くても25回程度までは正常の範囲とされています1)。
日中は、立ったり座ったりと姿勢が変わるため腸内のガスが移動しやすく、睡眠中よりもおならが出やすい傾向にあります。
また、日中は食事の消化過程でガスが発生しやすくなることも関連しています。
●おならの回数が増える主な原因
おならの回数が増える原因としては、主に以下の点が考えられます。
1.無意識に空気を飲み込む(呑気症)
2.女性のホルモンバランスの変化
3.ガスを発生させやすい食品の摂り過ぎ
4.消化器系疾患の可能性
以下では、これらの原因について詳しく解説します。
1.無意識に空気を飲み込む(呑気症)
無意識に大量の空気をたくさん飲み込むことによって、胃や腸などに空気が溜まり、引き起こされる症状のことを「呑気症」と言います。
吞気症の症状の一つとして、飲み込んだ空気が腸に溜まることにより、おならが増えることが知られています。
吞気症はストレスや早食いによって大量の空気を飲み込んでしまうことが原因といわれていますので、食事はゆっくり、落ち着いて摂ることを意識してみましょう。
2.女性のホルモンバランスの変化
女性の場合、ホルモンバランスの変化がおならの回数に影響を与えることがあります。
排卵後から生理前や妊娠中に増加する「プロゲステロン(黄体ホルモン)」は、腸の蠕動運動を抑える作用があります。
これにより便秘になり、ガスが腸に溜まりやすくなります2),3)。
そして生理が始まるとプロゲステロンが少なくなるため、抑制されていた蠕動運動が活発になり、溜まっていたガスがおならとして出されます。
3.ガスを発生させやすい食品の摂り過ぎ
大腸まで消化吸収されずに届いた食べ物は、腸内細菌による分解の過程でガスを発生させることがあります。
特に、小腸で吸収されにくく、大腸で発酵しやすい炭水化物を多く含む食品や、タンパク質・脂質を多く含む食品などはガスが発生しやすいとされています4)。
中でも、次のような食品の摂り過ぎでガスが発生しやすくなるとされています。
・高FODMAP食品
大腸で発酵しやすい炭水化物はFODMAP(フォドマップ)とも呼ばれており、次のような食品にFODMAPが多く含まれています。
【高FODMAP食品の例】
果物: りんご、桃、マンゴー、梨
乳製品: 牛乳、ヨーグルト、ソフトチーズ、フレッシュチーズ
野菜: キャベツ、玉ねぎ、ブロッコリー、アスパラガス
穀物: 全粒粉のパン、パスタ
豆類: ひよこ豆、レンズ豆
甘味料: キシリトール、ソルビトール など
これらの食品は、一般的には健康や腸内環境を整えるのに良いとされています。
高FODMAP食品の中には食物繊維を豊富に含むものも多く、食物繊維は腸内細菌のエサとなって健康に良い効果をもたらす短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸など)に分解されます。
そのため、全てを避ける必要はありませんが、もし特定の食品を摂った後に「お腹が張る」「腹痛がする」などの過敏性腸症候群のような症状を感じた場合は、ご自身の体質に合わせた食品選びをおすすめします。
どのような食品が合わないかは体質や腸内フローラによって異なるため、自身の腸内フローラを知ることが大切です。
・乳製品
牛乳や乳製品に含まれる乳糖を分解する酵素(ラクターゼ)が不足している「乳糖不耐症」の人では、小腸で分解しきれなかった乳糖が大腸で発酵されてガスが発生するため、おならの回数が増えたり下痢や腹痛の症状が現れたりします5)。
日本人はラクターゼの活性が低下している人が多く、このような症状が現れる人が多いとされています。
・ビールや炭酸飲料
ビールや炭酸飲料には二酸化炭素が含まれており、多く飲むと腸内でガスが放出され、おならが出やすくなります。
4.消化器系疾患の可能性
おならの回数が増えたり、においの変化が長期間続いたり、腹痛などの他の症状を伴う場合は、過敏性腸症候群や大腸がんなど、消化器系の病気が隠れている可能性も考えられます。
気になる症状が続く場合は、医療機関を受診しましょう。
また、逆におならが全く出ない場合は、腸閉塞などの可能性もあるため、そのような場合も医療機関の受診をおすすめします。
腸内細菌がおならを作る?その関係とは
おならのほとんどは、腸内細菌の活動によって作られるガスに由来します。腸内細菌がおならの発生にどのように関係しているのかを詳しく見ていきましょう。
●腸内細菌の働きとおなら
おならは主に窒素、酸素、水素、二酸化炭素、メタンなどのガスで構成されています。
窒素と酸素は主に食事の際に飲み込んだ空気に由来しますが、残りのガスのほとんどは腸内細菌の活動によって発生するといわれています。
そして健康な人の腸内細菌は、1日に0.2~1.5リットルものガスを生成するともいわれています4)。
腸内細菌によって作られたこれらのガスのほとんどは無害で、その大部分は腸管内の他の細菌に利用されたり、呼気(体外に吐き出す空気)として排泄され、一部がおならとして体外に排出されます。
おならの回数や組成に個人差がみられるのは、一人ひとり腸内フローラの構成が異なるためと考えられています。
●おならの回数や臭いに関わる腸内細菌
腸内には多くの腸内細菌が存在しますが、主にガスを生成するのはバクテロイデーテス門(Bacteroidetes門)やファーミキューテス門(Firmicute門)に属する一般的な細菌です。
これらの細菌はヒトの腸内細菌のほとんどを占めています。
これらの菌の一部は、消化しきれなかった食事成分を分解し、健康に良い効果をもたらすとされる短鎖脂肪酸(酢酸、酪酸など)や乳酸を作ります。
しかし、ガスの産生が過剰になると、おなかの痛みや過度なおならの発生といった不快感に繋がることがあります。
また、腸内細菌が産生するガスの中には、健康に悪い影響を及ぼすものもあります。
特定の菌が作る「メタンガス」は、腸の蠕動運動を抑制するため、おならが増加する原因となるといわれているだけでなく、大腸がんのリスクを高めるという報告もされています4)。
「硫化水素ガス」も特定の腸内細菌によって作られますが、このガスはおならが「くさい」と感じる原因になるだけでなく、炎症性腸疾患(IBD)や大腸がんにも関わる可能性が指摘されています4)。
この硫化水素を産生する主な腸内細菌は次の3つです。
・デスルフォビブリオ属(Desulfovibrio属)
・ビロフィラ属(Bilophila属)
・フソバクテリウム属(Fusobacterium属)
(参照コラム:「おならがゆで卵みたいな臭い|硫黄臭の原因は腸内細菌かも」)
おならを減らす具体的な対策|今日からできること
おならの回数や臭いは、次のような日々の生活習慣を見直すだけでも改善できる可能性があります。
1.食事の仕方を意識する
2.便秘対策をしっかり行う
3.腸内環境を整える
以下で詳しく説明しますので、おならの多さや臭いに悩んでいる方はぜひ試してみてください。
1.食事の仕方を意識する
・よく噛んでゆっくり食べる
食事を急いで食べると、必要以上に空気を飲み込みやすくなります。
なるべくゆっくり食事をすることで、飲み込む空気の量を減らすことができ、結果的におならの量を減らすことが期待できます。
・ガスを発生させやすい食品の摂取に気を付ける
タンパク質や脂質の多い食事、乳製品、炭酸飲料などを過剰に摂取していないか生活習慣を見直し、適切な摂取量に調整しましょう。
また、前半で述べた高FODMAP食品ではなく、低FODMAP食品を意識的に取り入れることもおすすめです。
低FDOMAP食品には以下のようなものが挙げられます。
【ガスを発生させにくい低FODMAP食品の例】
果物: バナナ、ブルーベリー、いちご
乳製品: 無乳糖牛乳、ライスミルク、ハードチーズ
野菜: ピーマン、にんじん、なす、かぼちゃ
穀物: 米、そば、グルテンフリー
豆類: 木綿豆腐
甘味料:メープルシロップ
2.便秘対策をしっかり行う
便秘になると、腸内にガスが溜まりやすくなり、おならが増える傾向にあります。
次のことを意識して便秘対策を心がけましょう。
・こまめな水分補給
日頃から便秘気味の方は意識的に水分を摂りましょう。
特に女性は、生理前や妊娠中に蠕動運動が抑制されて便秘になりやすいため気をつけましょう。
・適度な運動と規則正しい生活
ウォーキングなどの軽い運動や、規則正しい生活リズムは、自律神経を整え、腸の動きを活発にさせ便秘解消に役立ちます。
3.腸内環境を整える
腸内環境を整えることは、おならの回数や臭いの改善に繋がります。
次のことにも意識してみてください。
・善玉菌を増やす
ビフィズス菌や乳酸菌、酪酸菌のようないわゆる「善玉菌」といわれる腸内細菌は、腸の蠕動運動を促進します。
そのため便秘解消やおならの回数を減らす効果が期待できます。
これらの菌を増やすプロバイオティクス(善玉菌を含む食品)やプレバイオティクス(善玉菌のエサとなる食品)を積極的に食事に取り入れてみましょう。
ただし、プレバイオティクスの中にはガスを発生させやすい高FDOMAP食品ものもあるため、過剰摂取には注意が必要です。
・含硫アミノ酸を多く含む食品を避ける
おならの硫黄のような臭いの原因となる硫化水素は、含硫アミノ酸を多く含む食品(赤身肉、牛乳、卵、チーズなど)の摂取で増えるといわれています。
もし臭いが気になる場合は、これらの食品の摂りすぎに気を付けてみましょう。
まとめ:自身の腸内環境を知って、おならの悩みを軽減しよう
おならの回数が多いことや、臭いが強いことは、日常生活での不快感に繋がりますよね。
お伝えしたように原因や対策は様々で、一人ひとり腸内フローラの構成も異なるため、ご自身に合った対策を見つけることが大切です。
腸内フローラ検査「健腸ナビ」では、おならの臭いに関わる硫化水素産生菌の割合をはじめ、腸内環境を整えるのに効果的な乳酸菌や酪酸菌の割合が分かるなど、腸内フローラを可視化することができます。
また、大腸がんや過敏性腸症候群など、全身の30以上の病気のリスクがわかるため、お腹の調子が悪く悩んでいる方や、これらの病気が心配な方へもおすすめの検査です。
WEBで閲覧できる分析結果には、腸内フローラの構成を踏まえたおすすめ食品の情報も含まれているため、食品の摂取で腸内フローラの乱れの改善を目指すことができるなど、より健やかな毎日を送るためのヒントが詰まっています。
今回ご紹介した対策を参考に、ご自身の腸内環境と向き合い、おならの悩みを軽減できるよう、今日からできる小さなことから始めてみてはいかがでしょうか。
参考文献
1)Tomlin, J. et al. Gut 32, 665–669 (1991).
2)Bharadwaj, S. et al. Gastroenterol Rep (Oxf) 3, 185–193 (2015).
3)Liu, Z.-Z. et al. World J Clin Cases 10, 2976–2989 (2022).
4)Mutuyemungu, E. et al. Journal of Functional Foods 100, 105367 (2023).
5)Leonardi M. et al. International Dairy Journal 22, 88–97 (2012).
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