エクオールに副作用はある?サプリメントの安全性は?
菌と美容
健康や美容への効果が期待されるエクオール。
近年では、サプリメントでも手軽に摂取できるようになりました。
サプリメントの摂取で気になるのは、副作用などの「安全性」ではないでしょうか?
結論からお話しすると、サプリメントの摂取では副作用などの報告はなく、安全性に大きな問題はないとされています。
ただし、大豆アレルギーの方や、妊娠中や産後間もない人は、摂取を避けることが推奨されています。
今回のコラムでは、こうしたエクオールの基礎知識に加え、「腸内細菌」との密接な関係についてもご紹介します。
エクオールとは
エクオールは、特定の腸内細菌の働きによって大豆成分であるイソフラボンから生成される物質です。
このエクオールは、女性ホルモンのエストロゲンと類似した化学構造を持っているため、体内のエストロゲン受容体に結合してエストロゲンに似た働きをします。
このような性質を持つエクオールは、私たちの健康にさまざまな効果があることが知られています。
●エクオールの作用 1)–3)
エクオールは、エストロゲンの1/1,000~1/100程度という、非常に穏やかなエストロゲン様作用(女性ホルモンに似た働き)があります。
閉経後などのエストロゲンが不足している時には、エクオールがエストロゲン受容体に結合することで、その穏やかな作用を発揮し、不足分を補います。
反対にエストロゲンが過剰な時には、本来エストロゲンが結合すべき受容体にエクオールが先回りして結合(競合)してしまいます。
これにより、過剰なエストロゲンの働きを防ぐ「抗エストロゲン作用」が発揮されます。
エクオールのこれら2つの作用によって、女性ホルモンが安定した状態で維持される効果があります。
その他にも、エクオールには、抗アンドロゲン作用(アンドロゲンは男性ホルモン)と抗酸化作用があることが知られています。
●エクオールは何に効くのか?エクオールの効果は? 1)–3)
エクオールには、大きく分けて①エストロゲン様作用、②がんリスクの低減効果、③美容効果があります。
① エストロゲン様作用
エクオールは、私たちの体内で前述の作用を発揮し、下記を改善することが報告されています。
・更年期症状(ホットフラッシュの回数の減少など)
・骨代謝(骨粗しょう症改善、全身骨密度の低下抑制など)
・脂質代謝(LDLコレステロール値改善)
・血管機能
・糖代謝
② がんリスクの低減効果
・女性の乳がんリスクの低下
・男性の前立腺がんリスクの低下
エクオールは女性だけでなく、男性にとっても有用な物質となっています。
③ 美容面への効果
・目尻のシワ面積率の増加の抑制
・シワの最大深さの改善
エクオールによって、肌の老化を防ぐ効果も期待できます。
腸内でエクオールがつくられる人は多くない
大豆成分であるイソフラボンからエクオールを生成することができる腸内細菌を、エクオール産生菌といいます。
この菌を持っている人は、大豆食品などを食べることでエクオールが体内で作られ、その効果を得ることができます。
しかし、エクオール産生菌を持つ日本人は全体の30~50%程度にすぎず、特に20~30代の若年層ではさらにその割合が低いという報告もあります2),4)。
残念ながらこの菌を持っていない人は、大豆食品などを食べても腸内でエクオールはつくられず、その効果を得ることができません。


エクオールのサプリメント
近年、エクオールを含有したサプリメントが容易に入手可能となっています。
エクオール産生菌を持っていない人は、サプリメントを摂取することで、エクオールを取り入れることができます。
●エクオールの副作用は?
サプリメントとして摂取する場合、気になるのが安全性や副作用です。
現時点では、1日10 mg程度のエクオール摂取では、健康被害などの副作用は報告されておらず、安全性に関しては大きな問題はないとされています4)。
●サプリメントの摂取を避けたほうが良い人
ただし、エクオールのサプリメントには大豆成分が含まれていることが多いため、大豆アレルギーの人は摂取を避ける必要があります1)。
また、妊婦、妊娠の可能性のある人、産後間もない人(分娩直後から体が回復するまでの期間にある女性)は、摂取を控えることが推奨されています。
さらに、持病のある方や服薬中の方は、念のため事前に医師や薬剤師にご相談ください。
●エクオールのサプリメントは長期使用しても大丈夫?
エクオールはもともとエクオール産生菌によって腸内でつくられる物質であるため、サプリメントとして長期間摂取しても問題はないと考えられます。
ただし、万が一体調に異変を感じた場合は直ちに使用を中止し、医師へご相談ください。
●サプリメントの摂取を止めたらどうなる?
エクオール産生菌を持たない方の場合、サプリメントの摂取を中止すると、その効果は失われてしまいます。
実際に、エクオールの摂取を中止して1カ月後の状態を調べた研究でも、エクオールの効果が見られなくなったことが報告されています4)。
●サプリメントは腸内細菌に影響する?
エクオールのサプリメント摂取が、腸内細菌叢(腸内フローラ)にどのような影響を与えるかについては、まだ研究が十分に進んでおらず、現時点では明らかになっていません。
今後の研究が進み、この点が解明されることが期待されます。
●エクオール産生菌を持っている人はサプリメントを摂る必要はない?
エクオール産生菌によるエクオールの生成は、食物繊維やオリゴ糖(レジスタントスターチ、ポリデキストロース、ラフィノース、フラクトオリゴ糖など)の摂取により促進されることが報告されています4)。
そのため、これらを大豆製品と組み合わせて食べることで、腸内でエクオールが効率よくつくられることが期待できます。
エクオール産生菌を持っている人の場合、このように日常的に大豆食品と食物繊維などを摂取できていれば、サプリメントは基本的に必要ないと考えられます。
ただし、体内のエクオールは、原料となる大豆を摂取していないと、72時間でそのほとんどが体内から消失するとされています5)。
継続的に大豆食品を食べるのが難しい場合や、食生活に不安がある方は、サプリメントでエクオールを補充するのもよいでしょう。
最後に
ここまで、エクオールの基本的な知識に加え、腸内細菌との関係性やサプリメントの安全性についてご紹介しました。
エクオール産生菌の基礎知識については別コラムでも紹介しているので、そちらもご覧ください。
(コラム「話題の成分「エクオール」を体内でつくれない人がいる?!つくれない人の腸内細菌の特徴とは?」参照)
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参考文献
1)安井敏之 et al. 月刊地域医学 33, 35 (2019).
2)内山成人. 日本食品科学工学会誌 62, 356–363 (2015).
3)Lv, J. et al. Gut Pathog. 16, 35 (2024).
4)石見佳子 et al. 化学と生物 51, 74–77 (2013).
5)麻生武志 et al. 日本女性医学学会雑誌 20, 313–332 (2012).
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