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アルコールで腸内フローラが乱れる?!下痢になってしまう原因とは?

菌と健康

2025.06.25

お酒を飲むと胃痛や腹痛が起きたりしてお腹の調子が悪くなる……そのような経験のある方は多いのではないでしょうか。

特にお酒を飲みすぎた翌日は「下痢」になってしまい困ってしまうことも。

また、腹痛を起こすことから腸内フローラへの影響も気になるところです。

今回のコラムでは、アルコールと腸の関係について、詳しく解説いたします。


アルコール摂取で下痢になる主な原因3つ

お酒を飲むとついついおつまみが進んでしまい、飲みすぎてしまいますよね。

アルコールをとって下痢になる主な原因としては、次のことが挙げられます。

1.飲み過ぎ・食べ過ぎ
2.膵臓の機能低下
3.腸内環境の悪化

以下では、これらの原因について詳しく解説します。

●飲み過ぎ・食べ過ぎが原因の場合

飲み過ぎや食べ過ぎで下痢になってしまう場合、腸内はどのような状態になってしまうのでしょうか?

まず、摂取したアルコールのうち、約20%は胃でゆっくりと吸収され、残りの約80%は小腸で速やかに吸収されるといわれています。

しかし、アルコールを摂りすぎると小腸の粘膜に存在する消化酵素の活性が阻害されるため、糖分や脂肪を分解・吸収する力が低下して、消化不良が起きてしまいます。

また、お酒やおつまみには糖質、塩分、脂質が多く含まれていて水分の吸収率が高いため、大腸から体内へ水分が吸収されにくくなります。

その結果、大腸内は通常より水分量が多い状態となり、そこに小腸から未消化物が大量に流れ込んでくるため、これらを早く排泄しようとして蠕動運動が活発となり「下痢」が起こるのです1)。

●膵臓の機能低下が原因の場合

膵臓は消化酵素を含む膵液を分泌しますが、膵臓の機能が低下すると、消化酵素の分泌が不足し脂肪の分解・吸収ができなくなるため、脂肪便(油のように広がる脂肪を多く含んだ便)や下痢が起こります。

脂肪便の原因となる膵臓の病気には、慢性膵炎や膵臓がんなどがあります。

脂肪便が続く場合は、医療機関を受診し、医師に相談しましょう。

●腸内環境の悪化が原因の場合

飲みすぎ・食べすぎにより、腸内環境が悪化して、慢性的に下痢が起こりやすい状態になっていることも考えられます。

そのような腸内環境でアルコールを摂取すると、また下痢を起こすという悪循環に陥る可能性もあるでしょう。


アルコール摂取による腸内フローラへの影響

アルコールの摂り過ぎによる腸内フローラへの影響としては、次のようなことが研究で示されています2)–8)。

●小腸における細菌の過剰増殖と、腸内フローラのバランス異常(ディスバイオシス)の発生

ヒトやマウスの研究で、アルコール摂取によって小腸の細菌が過剰増殖し、また、盲腸(大腸の始まり)でディスバイオシスが起きたことが報告されています5),6)。

●腸管バリア機能の低下と血中エンドトキシン濃度の上昇

アルコールが分解されて生じるアセトアルデヒドは、腸管のバリア機能を低下させて、腸管透過性を高め、腸漏れ(リーキーガット)を起こす可能性があります7)。

また、アルコールを過剰に摂取する人や、アルコール関連の病気にかかっている人では、グラム陰性菌であるプロテオバクテリア門(Proteobacteria門)やフソバクテリウム門(Fusobacteria門)が多いことが報告されています2)–4),8)。

グラム陰性菌はリポ多糖(LPS)という外膜を持っており、これは内毒素(エンドトキシン)とも呼ばれ、体内に侵入すると炎症反応を起こすことがわかっています。

つまり、アルコールの過剰摂取によって腸管のバリア機能が低下することで、エンドトキシンが体内に侵入し、血中のエンドトキシン濃度の上昇につながる可能性があるのです。

そして、このような腸由来のエンドトキシンが、アルコール性肝疾患の発症や進行に関わっている可能性も指摘されています7)。

●酪酸菌の減少

アルコールを過剰に摂取する人では、酪酸菌(酪酸産生菌)であるフィーカリバクテリウム(Faecalibacterium属)が少ないことや、便中の酪酸濃度が低いことが示されています3)。

酪酸は、腸粘膜のバリア機能の維持など腸内環境を健康に保つさまざまな働きをする短鎖脂肪酸のひとつです。

腸内の酪酸濃度の低下は、腸のバリア機能や免疫機能の低下などを引き起こします。
※コラム「実は健康維持に不可欠! 腸内細菌がつくる「酪酸」~酪酸菌とは?~」、「酪酸菌はこう増やす!ただし増えすぎると危険なことも?!」参照


アルコールから腸を守るために

アルコールは過剰摂取すると下痢が起きたり、腸内環境が乱れて最終的には病気を発症してしまうなど、さまざまな悪影響をもたらしてしまいます。

アルコールから腸を守るためには、次のようなことを心がけましょう。

●アルコールで下痢にならない方法

できるだけ胃腸に負担をかけないために、次のような飲み方がおすすめです。

・食べてから飲む
・水などのチェイサーを飲む
・塩辛いものや揚げ物を控える
・食物繊維の多いものを一緒に食べる
・休肝日をつくる

●腸内環境を整える方法

アルコールの摂取で引き起こされる腸内フローラのバランス異常をできるだけ整えるために、次のことを意識して日ごろから腸内環境を整えることを心がけましょう。

・お酒はほどほどに
・食物繊維の多い食品を摂る
・自身に適したプレバイオティクスやプロバイオティクスで腸内環境を整える
※コラム「腸内環境はどのくらいで変わる?腸内環境改善のコツは「継続」!」参照


まとめ

飲酒後の下痢は、飲み過ぎや食べ過ぎによる胃腸への負担が主な原因です。

また、アルコールを過剰摂取すると、腸内フローラが乱れたり、病気の発症につながったりする可能性があります。

健康に楽しくお酒を飲むために、飲みすぎに気を付けるとともに、腸内環境を整えることを意識してみるとよいでしょう。

腸内環境を整えるためには、まずは自身の腸内フローラの状態を知ることが大切。

「健腸ナビ」では、酪酸菌がどれくらいの割合でいるのか、腸内フローラのバランスがどうかなど、さまざまな評価によって腸内フローラを見える化することができます。

さらに、腸内フローラから病気のリスクが評価され、個々人の腸内フローラの構成を踏まえたパーソナルなおすすめ食品がわかります。

自身に適した腸活とともに、うまくお酒と付き合っていきたいものですね。


参考文献
1)森朱夏. アルコール関連問題予防研究会 (2009).
2)Meroni, M. et al. International Journal of Molecular Sciences 20, 4568 (2019).
3)Bjørkhaug, S. T. et al. Gut Microbes 10, 663–675 (2019).
4)Engen, P. A. et al. Alcohol Res 37, 223–236 (2015).
5)Yan, A. W. et al. Hepatology 53, 96–105 (2011).
6)Bode, J. C. et al. Hepatogastroenterology 31, 30–34 (1984).
7)Purohit, V. et al. Alcohol 42, 349–361 (2008).
8)Tsuruya, A. et al. Sci Rep 6, 27923 (2016).



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